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それは例えばカフェのような

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そこにはいつも私の指定席があった。
そこは、決してきれいだとか素敵だとは言い難かったけれど、不思議と居心地がよかった。
好きなときにふらりと立ち寄れる、そんな気楽さで私を受け入れてくれる場所だった。
そこで私は一人勉強したり、本を読んだり、どれだけの時間を過ごしただろう。
その、私のお気に入りだった空間は、今はもうない。

徒歩5分圏内にお気に入りのカフェがないことを、時々残念に思う。
家で美味しいコーヒーの淹れ方を研究するのも好きだけれど、
時には見知らぬ人が行き交う雑踏を眺めつつ、ゆるゆるとした時間が流れる空間に身を置いて、
静かに人が淹れてくれたコーヒーを頂きたくなることもある。
たとえそれが、価格に見合うだけの美味しさを兼ね備えたものでなくても。

空間や雰囲気といったものにお金を払うことを、理解しない人はたまにいる。
例えば、目に見えないもの、直接触ることのできないもの、
そういったものを軽視する人に接するとき、言い様のない悲しい気持ちで一杯になってしまう。
言葉を尽くして、心を尽くして語りかけても、その人にはきっと永遠に分からない。

急用ができて、夕方から街へ出かけた。
ある狭い路地に差し掛かったとき、私は思わず立ち止まらずにはいられなくなった。
香ばしい美味しそうな香りが、嗅覚を擽る。
そうか、徒歩5分、なんて言わずに、ここまで足を延ばせばいいだけではないか。

贅沢なんていらない。
ただ、形のないものの力を感じる力を、失くしたくないだけ。
それは、ささやかなものではあるけれど、大きな気持ちの余裕を生むのだから。

恋しい空間

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毎年、夏になると必ず出掛ける町があった。

陽射しが照りつく中を、石造りの建物と建物の間の細い路地をのんびり歩いたり、
笑顔の素敵なカフェのおばちゃんと、言葉も通じないのに心を通わす時間が好きだった。
夕暮れ時、教会の外の石のベンチに腰をかけて、次第に色の変わっていく空を、
何の気なしにただただ眺めているのは、中でも私の一番のお気に入りだった。

今年も、そのベンチはきっと変わらず静かにそこに佇んでいて、誰かを座らせているのかもしれない。
そうして、昨年と同じように、時間の経過とともに空は次第に色を変え、
夕焼けに染まっていた空にはやがて、一面に星がちりばめられるのだろう。

私が知っているのはただ、その風景の中に、私がいないということだけ。

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